『変容編A』「人の学びのプロセスとはどのようなものか」

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はじめに

 

この記述はあくまでも形式的な知識であり、加害者変容には共に学び変わっていく「仲間」との相互協力、プログラム内レクチャー、ホームワークなどの「実践」が重要になります。

 

これらなくして変容に取り組むことは容易ではありませんので、主催者を含むメンバー同士の知識とケアを交換する場であるGADHAチームslack(無料)への参加、個別の質疑応答や実践的な内容を含む加害者変容プログラム(有償)への参加を強く推奨いたします。

GADHA理論入門編

これらのコンテンツは元々有償で提供していたものです。しかし、1.より多くの潜在的加害者に低いハードルでアクセスしてもらうこと、2.活動の透明性を高めて他の組織・活動と比較してから参加してもらえるようにすることを目的に、オープンアクセスにしています。

オープンアクセスにするということはGADHAの活動の持続可能性を下げるということです。そこで、マンスリーサポーター(MS)の方々を募り、応援してくださる方が増えるほどオープンアクセスコンテンツを増やすという仕組みを取り入れています。

つまり、このコンテンツはMSの方々の協力により誰でも閲覧可能になっています。心より感謝申し上げます。GADHAを応援したい方、理論を知りたい方、恩送りをしたい方などはぜひマンスリーサポーター制度をご覧ください。

 

以下、加害者変容理論「変容編(前編)」を述べていきます。

変容すると言っても、具体的にどうすればいいのだろうか?

「規範編」を読まれた方は、変容するためには「加害のシステムからケアのシステムに変える」ということが必要だ、ということの理解ができたかと思います。

 

そしてどうやらそれは良いことのようだ、と考えることもできたでしょう。

 

けれどもそこで問題になるのは、変わるといっても、具体的にどうしたら人は変われるのか?という部分です。

その問いに応えていきましょう。

「まず行動を変える」ことの重要性

先程の問いの答えはただひとつです。

言動を変え、結果が変わることで信念が変わる。

このこと以外には存在しません。

 

「規範編」でケアの信念体系についてこれでもかと言うほど解説しましたが、最初からそれを信じる必要は全くありません。

 

信じられなくてもいいので、それに基づいた言動を試してみてほしいのです。

 

言動が変われば、必ずこれまでとは異なる結果が生じます。

そしてその結果が自分にとって良いものであった時に、人の信念は変化します

 

他人に何かを言われ説得され、

 

「私はそういう信念を持つ人間に変わります」

「それは素晴らしいことなのですね」

 

そう考えたとしても、人間はそう簡単に変われるものではありません。

 

恐る恐る、疑心暗鬼になりながらも行動を変えた時に良い結果が生じ、その結果を目の当たりにし、自分がした選択が良いものであったことを受け容れる。

 

人はそういった瞬間に、今まで生きてきた何十年もの間積み重ねてきた信念を変えることができるのです。

 

故に、GADHAでは思想や形式的な知識も大切にしますが、それらと同様にホームワークと実践が非常に重要になります。

「行動を変えることで信念が変わる」とは?

ここで具体的な例をひとつ示します。

 

部下に仕事を任せてみることでしか、任せることで伸びることを信じられないのと同じ、と言うとわかりやすいでしょうか。

 

恐らく、これを読んで下さっている方の多くは「人に頼る」ということが苦手なのではないかと推察されます。

 

部下に何かを伝えるような時にも、必要以上に細かく指示をしてしまったり、必要な指示をしないにもかかわらず相手が間違ったことをしたときには怒鳴って怒る、そのような形での育て方しかできないのではありませんか?

 

ここで何を示したいかというと、行動を変えずに、信念や考え方が先に変わるのは有り得ないということです。

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(図表1)

図表1を参照してください。

 

ある与えられた環境Xにおいて(例:養育環境、子供の時に通っていた習い事、学校、部活、職場など)、ある信念に基づく行動をとりその結果が悪い結果であれば、信念Aを破棄します。

 

ここでも具体例を挙げてみましょう。

 

傷ついた時に自分が弱音を吐いてみるという行動をとった時に「弱音を吐くなんてかっこ悪い」などと言われたとします。

 

するとその人は、それは駄目なことなのだ、人に弱音を吐いてはいけないのだ、そのように思うでしょう。

 

すると、この信念Aを破棄しそして信念Bに移る。

 

つまり、弱音を吐かないほうが良いのだ、という信念を持ちます。

 

そうして弱音を吐かなくなると、本心ではとても嫌なことでも「いや、頑張ります!」と言って頑張ってしまう。

 

そうして「お前ガッツあるな」と人から褒められたりなどして「やはり弱音を吐かないほうがいいのだ」と思うのです。

 

そうして新たな信念が発生するということです。

 

これらの背景には、明らかに行動が先だという事実が存在します。

 

行動が先で、その結果が出ることで信念が形成され直していくということです。

 

そこで問題となるのが、この信念、行動、結果の関係性という物が環境によって変わることです。

 

ある環境においては良い結果を生んでいた行動にも関わらず、違う環境に移り同じ信念Bに基づいた行動を取ったとき、それが悪い結果を生んだとします。

 

具体的には、弱音を吐いてはいけないと思いそうすることなく頑張っていたら鬱になってしまった、潰れて仕事ができなくなった、などの現象が起こり得ます。

 

ここが重要なのが、そのような時に悪い結果を受けて、一度獲得した機能的な信念を破棄して違う行動をとるのは難しいということです。

 

人は、一度成功したことを何度もやりたくなってしまうものです。成功体験を積むからです。

 

でも、ここで勇気を出して違う行動を取ってみることが必要になります。

 

けれども、そもそもどのような行動があり得るのかを知らないと、それを試すことは不可能です。

 

先程の例で述べると、加害のシステムしか知らない人間が、ケアのシステムを知らずにケアの行動を取るのは無理なのです。

 

従って先にロールモデル、こういう行動が良いことのようだ、という物を知ることが必要になります。

 

必要になりますが、信じなくても良いのです。

まだ信念になっていなくても良い。

 

ただこういった言動が有りうるということを知り「本当に良い結果が出るのだろうか」と疑いながら実行する。

 

そうしていい結果が出ると「どうやらこれはとても良いことなのだ」と感じ「ケアの信念は良いものだ」ということになるわけです。

自分が「間違う可能性」を認識する

そしてここでさらに重要な点は、「ケアの信念は良いものだ」と考え別の環境に移ったときにどういった行動を取るか、ということです。

 

例えば「パートナーとの関係においては問題なく機能していたが、子育てにおいては問題が生じた行動」に対して「また子育てだと少し違うものだな」と捉え、更に学びなおせるか。

 

そこが重要だということです。

 

自分の信念を正しいもの、間違っていないものと考え、他のことは有り得ない、間違っている、現実がわかっていないと言うような人たちは、自分が「間違う可能性がある」ということに気付いていません

 

間違う可能性があるということに気づけない人は、行動を変えることもできません。

行動を変えることができないということは、結果を変えることもできないということです。

故に信念が変わることも有り得ないのです。

 

更に厄介な状態なのが、悪い結果が生じたことを認めないというものです。

 

起こった現象に対して「これは相手が悪いのだ、自分はこれをどうでもよいと思っていたから構わない」などと言うことを通して、自分自身の行動や考え方が悪い結果を招き、それが生み出した現実を認めないというパターンです。

 

そうなると不幸一直線としか言いようがありません。周りの人も非常に不幸になるでしょう。

 

間違いを認められないということは、自分のことも他人のことも不幸にします。

 

ただ、この悪い結果を受け入れて違う行動をとることは、葛藤や混乱、価値観が崩れ去ることによる虚無感を絶対に伴います。

それはとても悔しいことであり、自分が信じてきた何かが崩壊することを意味しているからです。

 

その虚無感と向き合い、迷いながらも乗り越え、恐怖を抱きながら新しい行動を取り、そしてそれによっていい結果が生まれ、それを採用して変わっていく。

 

そのことを一般的な日常用語では「一皮むける」というふうに表現します。

(違う言い方をすれば変容学習、トランジション、水平的な成長など)

 

その変容の過程をGADHAではロードマップで理解することが可能と考えていますので、そちらの詳細は後編に記します。

終わりに

ここまでの記述を読んで頂けたことに、心からの感謝と労いを表します。

 

変容への強い願いがなければ、ここまで読み進めることすら不可能だろうということは想像ができます。

逆を言えば、これを読んでくださっているあなたは、その強い願いを胸に持っているということに他なりません。

 

もし、読み進めて更に学びたいという想いを持っていただけたのであれば是非「加害者変容理論 変容編-後編」もご覧になっていただければと思います。

 

そして更に、知識だけでなく実践を含めた変容に踏み出したいという気持ちを持っていただいた方を対象にGADHAチームslack当事者会加害者変容プログラムを運営しておりますので、そちらへのご参加を心よりお待ちしております。

GADHA理論入門編

これらのコンテンツは元々有償で提供していたものです。しかし、1.より多くの潜在的加害者に低いハードルでアクセスしてもらうこと、2.活動の透明性を高めて他の組織・活動と比較してから参加してもらえるようにすることを目的に、オープンアクセスにしています。

オープンアクセスにするということはGADHAの活動の持続可能性を下げるということです。そこで、マンスリーサポーター(MS)の方々を募り、応援してくださる方が増えるほどオープンアクセスコンテンツを増やすという仕組みを取り入れています。

つまり、このコンテンツはMSの方々の協力により誰でも閲覧可能になっています。心より感謝申し上げます。GADHAを応援したい方、理論を知りたい方、恩送りをしたい方などはぜひマンスリーサポーター制度をご覧ください。

 

クレジット

本記事は「変わりたいと願う加害者」の集まりであるGADHAメンバーの協力を得て作成しています。お力添えに深く感謝します。

動画編集:匿名

文字起し:たかさし

執筆  :春野 こかげ (@d_kju2)

責任者 :えいなか (@Ei_Naka_GADHA)