※現在、非常に多くの方から「自分を被害者と言っていいのか、むしろ加害者ではないのか…」と相談をいただいています。GADHAは「変わりたいと願う加害者」のための場であり、被害者としての側面があると感じられる方はまず被害者の方々向けの場に参加されることを強く推奨します。
GADHAでは加害者変容のために親子関係や職場、学校(特に部活など)における被害者性について言及することはあっても、パートナーからの被害者性については話しません。あくまで自分の加害と向き合う場であり、自分が行った加害行動の責任は自分のものとして引き受けるためです。
繰り返しになりますが、そのため「自分は被害者なのか、それとも加害者なのかわからない」「自分が被害者だと思ってパートナーに伝えたら、逆に自分が加害者だと言われて混乱している」といった方は、GADHAよりも先に被害者の方々向けの場への参加を強く推奨します。被害者の方々向けの場について、この記事でも紹介していますので、ぜひご覧ください。
記事の目的と構成
このガイドは、DV・モラハラ加害者のパートナー(配偶者や恋人)の方のための記事です。
- 自分は一体、どのような被害を受けているのか
- パートナーは変わってくれるのか
- 自分はこれからどう関われば良いのか
- 自分も加害者ではないのか
といった、DV・モラハラ加害者をパートナーに持ってしまった方々にとって重要な情報を提供していきます。今後も、随時更新していきます。
GADHAとは

G.A.D.H.A(Gathering Against Doing Harm Again:ガドハ)は、大切にしたいはずのパートナーや仲間を傷つけたり、苦しめたりしてしまう「悪意のない加害者」が、人との関わりを学習するためのコミュニティサービスです。
当事者オンラインコミュニティ運営、プログラムや記事による加害者変容理論発信、トレーニングを行い、大切な人のために変わりたいと願う「悪意のない加害者」に変容のきっかけを提供し、ケアのある社会の実現を目的としています。
はじめにお伝えしたいこと
被害者の方々に、一番最初に伝えたいことがあります。それは、ご自身の心身の健康を最優先いただきたいということです。
DV・モラハラなどの加害者と関わることは、その後の人生に大きな悪影響を与える可能性があります。
すでにされていらっしゃるかもしれませんが「DV 被害者 自助グループ」「モラハラ 被害者 当事者会」などと検索し、近い境遇の方とぜひ話してみてください。
現在、紹介可能な自助グループなどを探しております。よければぜひこちらより情報提供くださいませ。
他にも、様々な情報源がありますので、列挙しておきます。
- 無料でモラハラやDVの相談ができる公的機関や相談機関一覧
- (by離婚弁護士相談ナビ)
- 配偶者からの暴力全般に関する相談窓口
- (by内閣府男女共同参画局)
- パートナーや恋人からの暴力に悩んでいませんか。一人で悩まずお近くの相談窓口に相談を。
(by政府広報オンライン)
緊急避難が可能なシェルターや、ストーカーと化した場合の個人情報の秘匿方法など、ご自身を守るための多くの情報が得られるはずです。
この記事を書いている人間は、DV・モラハラの加害者であることを自覚した男性当事者です。僕が被害者の方々向けの支援サービスをする資格を持っているとは到底考えられず、より専門的な場への相談を強く推奨いたします。
いまこれを読んでいる方にとって、最も重要な視点が抜けている可能性があることを必ず留意いただき、被害当事者の方々の声を重視いただくようお願い申し上げます。
あなたが受けている被害について
続いてお伝えしたいのは、あなたが受けている被害が一体どのようなものなのかについてです。
物理的な暴力を伴うDVについては、わかりやすく、明確にDVと認識しやすいと思われますので、ここでは言葉による精神的な暴力についてお伝えいたします。
こちらの記事に、加害者側の目線に立って「加害とは何か」を記述しています。ぜひこちらをご覧の上、ご自身がこの被害を受けていないかご確認ください。
一言で言うと、DVとは「支配-服従の関係を作ること」です。物理的な暴力は、そのための手段に過ぎません。
例えばあなたが「そんなくだらないことで、落ち込むな。家の空気が悪くなるだろう」と言われる時、二重三重にあなたは傷つけられています。
「くだらないかどうか」を決められるのはあなただけなのに、加害者は勝手にあなたの感情を決定しようとします。
本当は自分がケアしてもらえないことに腹を当てているだけなのに「家の空気が悪くなる」と、まるであなたが悪いことをしているかのように言い、罪悪感を与えています。
あなたが落ち込みをやめられないと、モノに当たったり、無視したり、お金を出さなかったり、大きい声で威圧したりするならば、それは明確に加害です。
あなたは「反抗しても面倒だから、言うことを聞いておこう」と思うでしょう。そして、自分の解釈を諦め、相手の解釈を受け入れさせられるでしょう。
あなたに直接暴力を振るっていなくても、解釈を独占し暴力によって強要しているからです。これが加害であり、DVであり、モラハラなのです。
パートナーは変わってくれるのか
あなたにとって大事なことは、パートナーが変わってくれるかどうかでしょう。
愛がなければ一緒にいないはずです。しかし、愛があっても、相手からの愛(配慮、ケア)がなければ、関係は限界を迎えてしまいます。
あなたはその限界を感じながらも、自分がどう関わればいいのかわからず、色々なキーワードで調べ、このページにたどり着いたのではないでしょうか。
結論を述べると、あなたのパートナーが変わる可能性はあります。しかし、多くの場合は変われないでしょう。
変われる人と変われない人の違いは明確です。それは「自分に問題がある」と自覚できるかどうかです。
自覚できさえすれば、GADHAや他の権威あるプログラムを通して変容する可能性があります(残念ながら100%ではありません)。
しかし、ここで非常に重要なことをお伝えする必要があります。それは、「あなたには、相手を変えてあげる責任や義務は存在しない」ということです。
「自分にまだできることがあるのではないか」
「別れる前にできることをしよう」
と考えることは、加害者にとっては非常に運が良いことです。しかし、いち加害者として、それを推奨することはできません。
加害者の変容は、非常に困難を伴います。被害を直視し、自分が加害者であることを認め、変わろうとすることは逃げ出したくなるほどの苦痛を招きます。
上記の記事に、加害者が責任を引き受けると言うことについて書いてあります。読んでいただくとわかると思いますが、大変なプロセスです。
ゆえに、「こんなにおれを苦しめているお前は加害者だ」とあなたを責め、攻撃してくる可能性も十分にあり得ます。
ですから、もしもあなたが加害者の変容を促す場合は、ご自身がいつでも距離を取れるようにしたり、なにか攻撃された場合に助けを求められるコミュニティを準備しておくことを強くお勧めします。
少なくとも、被害者の当事者コミュニティや自助グループなどと連携することが望ましいと思われます。決して無理せず、ご自身を第一にお考えください。
加害者は大人です。大切な人を傷つけてしまっているなら、それを自覚して改善することは、本人が責任を持ってやり遂げるべきことです。
決して、あなたがその責任を持つ必要はなく「俺が変わるまでそばにいてくれないなんて薄情だ」といった言葉に騙されてはなりません。
「そばにいてもらえない」ほどに傷つけてきた加害の責任を取れない、未熟な人間の、罪悪感によるコントロールです。
自覚を持たせるにはどうしたら良いのか

DV・モラハラ加害者が変容するためには、上記のようなプロセスを辿ることが予想されます。
加害があり、関係の危機があり、問題の自覚があり、知識を獲得し、実践を繰り返し、成果が出ることで信念も含めた変容に向かっていきます。
加害者プログラムに参加する人のおよそ8割は、妻が家を出る際に「話をしたければこのプログラムに参加してください」という手紙を残して出て行った人たちだと言われています。
加害者は自ら自分の問題に気づくことはありません。実際に愛する人との関係が終わってしまう時に、その恐怖から反省し、関係を修復しようとするときに問題を知るのです。
しかし、問題を知るからといって、自覚して改善できるとは限りません。もし変わることを望むのならば以下の行動を取ることも考えられます。
自覚が難しそうであればとにかく距離をとって関係を終わらせる方があなたにとって良いということは断言できます。自覚してすら変容は困難だからです。
それでは、どんなふうに問題を自覚させるかを考えます。流れとしては、以下のような順番になると思います。
- tweetなどを見せる(
僕のtwitterのfav欄も参考にどうぞ)
- 軽い記事などを見せる
(例えばこちら)
- 重めの記事などを見せる(例えば
こちら)
- 当事者会に参加するよう依頼する(例えば
こちら)
- プログラムに参加するよう依頼する(例えば
こちら)
上から順に簡単で、下に行くほど重たいものになっていきます。
実際、GADHAの当事者会に参加してくださる方には「パートナーからGADHAのtwitterや記事を紹介された」と言う方が半数以上です。
問題を自覚することで、改善しようと思える人はいるのです。
しかし、これらを頼んでも全く無視されるか、あるいは攻撃してくるような場合(おれが病気だっていうのか! お前の方が加害者だ! など)や、それが容易に想像できる場合は、変容可能性を信じ続ける方が苦しいでしょう。
外部の活動
加害者の変化を支援し、最終的には被害者を支援することを目的とした組織やサービスは存在します。 その多くが、被害者向けのさまざまな活動に取り組まれています。
ぜひ、頼ってみてください。また、ここに紹介されるべき組織やサービスをご存知の方はぜひご連絡ください。
アウェア様は、DV被害女性プログラムを開催されています。
原宿カウンセリングセンター様は、DV被害者のグループカウンセリングを行っています。
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終わりに
G.A.D.H.A(Gathering Against Doing Harm Again:ガドハ)は、大切にしたいはずのパートナーや仲間を傷つけたり、苦しめたりしてしまう「悪意のない加害者」が、人との関わりを学習するためのコミュニティサービスです。
当事者コミュニティとイベントの運営、加害者変容理論の発信、トレーニングなどを行い、大切な人のために変わりたいと願う「悪意のない加害者」に変容のきっかけを提供し、ケアのある社会の実現を目的としています。
当事者コミュニティやトレーニングに関するお問い合わせはこちらから。