「なぜ自分への情動調律が加害者変容にとって大切なのですか?」

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この記事はプログラム参加者などGADHA理論を学んだ人からの質問への回答となっています。基本となる考え方自体は、GADHA理論ページから学ぶか、GADHA加害者変容プログラムに参加することを通して学習ください。

Q.質問

加害者変容のためには、加害者が自分の気持ちや考えを自分で理解しようとすることも大切だと聞きました。被害者の気持ちや考えを理解して情動調律することが大切なのはわかりますが、なぜ自分への情動調律が重要なのかよくわかりません。

A.応答

他者と関わる時、そこには常に自分のニーズが存在しているからです。そして、自分のニーズに無自覚に人と関わると、人を傷つけることになるからです。

自分の大切にする価値観と、他者が大切にする価値観は全くの別物です。ですから、各々のニーズも違ってきます。

自分がどういう価値観を持っていて、どういうニーズを抱えているか。実はそれをわからずに話していて、ついつい「普通は〜」とか「自分の周りはこうしている」などと言ってしまうことがあります。

でもそれは、究極的には「だから、自分はこうしたい/したくない」というニーズを満たすために持ち出しているに過ぎません。

それが正しいからでも誰もがやっているからでもなく「自分がしたいから/したくないから」なのだと気付けた時、「相手がしたいから/したくないから」も尊重する必要があることに気付けるのです。合理性があるか、論理的かどうかなど、瑣末な論点です。

それを認めることにより、「自分はこういう風に感じていて、こうして欲しいと思っているけれど、相手はどうだろうか」「相手はどう感じていて、どうなったら嬉しいと感じるだろうか」と考えることに繋がっていきます。

〜すべき、とか〜しなければダメだ、というものでなく、「自分はこう考えていてこんな所が不安だったり心配だったりするから、こんなふうにしてもらえたら嬉しいんだけど、あなたはどう思う?」というオープンな問いかけをすることによって、相手も自分の考えや気持ちを話しやすくなります。

そこから、本当の対話が始まります。

私とあなたの大切にしたいことを、どちらも大事にしながら、一緒に生きていくことはできるだろうか? この至極当たり前の基本的な問いを持ちながら話し始める時、解釈強要のような暴力を振るうことはできないと自覚できます。

ですから、変容しようとする中で相手の言いなりになろう、自分を殺そうとすることで状況の改善をしようと試みる方もおられるのですが、これはむしろ逆効果です。

何故なら、それをするということは1人の人間が消えるということだからです。存在すること自体が苦しくなってしまって、典型的なものでは鬱だったり適応障害の症状が出てきてしまいます。

そして、情動調律やケアというものは、「違う人間」だからこそ行うことができるものです。絶対的に違う存在同士であり、完璧な理解をすることは不可能な者同士が、それでも理解しようとか、ケアしようと試行錯誤するからこそ幸せを感じられるのです。

あなたという存在が消えてしまったり相手と同じものになってしまったなら、情動調律にもケアにも共同解釈にもならず、そこに幸福はありません。

そのようになってしまっては関係の継続は難しくなってしまうので、元も子もありません。相手の気持ち、価値観を大切にするのと同じくらい、自分の気持ち、価値観を大切にすることも必要なことなのです。

大切にするためにも、まず自分がそもそもどんな価値観を持ち、ニーズを持っているのかを理解していくことは必須になります。だから情動調律を自分にすることが重要なのです。

一方で加害者が決して忘れてはいけないこと、それは「まさに上記のような苦しみを、被害者に与え続けてきたのだ」という自覚です。言いなりになること、自分を殺すこととは本当に苦しいことなのです。そうして僕たちは被害者に地獄の苦しみを与えてきたということです。

そのような背景があるのですから、加害者変容をしていく中で、特に初期には相手への情動調律を優先することが多くなります。今まで相手のニーズを散々無視してきてしまっているのに、いざ変容するとなると「自分のニーズを尊重してくれ」と相手に要求するのはあまりにも無理があるからです。それは加害的ですらあります。

でも、加害者変容は辛い。相手への情動調律を優先することは、難しい。だからこそGADHAが存在しています。ここで自分の感情やニーズの理解を深めたり、苦しさを分かち合いましょう。加害者変容をしようとするほぼ全員に「これはいつまで続くのだろう...」という弱音を吐きたくなる時があります。

そのような時、それを被害者にぶつけるのではなく、加害者同士で労い合い、励まし合いながら変容を進めていきましょう。償いは、加害者変容は決して下を向いて生きていくことではありません。それは自他共に、持続可能な形で、ケアし合い、美徳を発揮しあえる関係の中に生きる幸福のためにあります。

終わりに

この記事はプログラム参加者などGADHA理論を学んだ人からの質問への回答となっています。基本となる考え方自体は、GADHA理論ページから学ぶか、GADHA加害者変容プログラムに参加することを通して学習ください。

制作

GADHAは「変わりたいと願う加害者」による当事者団体です。自身の加害者変容並びに加害者の再生産を防止することを目的として、本記事はGADHAメンバーによる協力によって制作されています。

文字起こし:くろとうさん @ktkt_tsk 

執筆:さくらさん @sakura_kizu

責任:えいなか @EiNaka_GADHA

 

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