『それでも話し始めよう』加害者の学びの手紙2

概要

GADHAは「手紙を書く読書会」を開催しています。本記事は、「相手を尊重したコミュニケーション」について課題図書:アン・ディクソン『それでも話し始めよう』(クレイン,2006)を読んで書いた手紙を、許可を得て掲載しています。

他の感想文はこちらからご覧ください。

目的

自分も変わりたいと願う加害者の方々が「一体何から読んだらいいんだろう?」と考えた時に、膨大な参考文献を紹介するだけでは不十分だと考えました。

たくさんの本の中でも本当に重要で必須の知識、しかも実用的で役に立つものを選書し、しかも読むだけではなく書くことを前提とすることで理解の程度を深め、さらに読書会で人と感想や考えをシェアすることを通して定着する。

パートナーとの関係をよくしていくために、行動を変えることがもちろん重要ですが、その前提となる知識をきちんと学べるようにするために手紙を書く読書会を開催しています(ただし必ず本人に手紙を渡す必要はありません)。

さらに、それを手紙として公開すれば、これから学びたい人にとっても何かの参考になると考えています。

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本文

XXXへ

「それでも話し始めよう」を読んで、学んだこと、今後の二人のために自分が変えていこうと思ったことを手紙にします。

この本を読んで、これまでの自分自身のコミュニケーションスタイルが、二人の関係性の中に「上下の関係」を作り出し、息苦しいものにしていたんだと痛感しました。

ずっと辛い思いをさせ続けてしまって、本当に申し訳ない。

自分のコミュニケーションは、

- ただの会話の中でも、知識をひけらかしたり、相手を否定したりして優位に立とうとする

- 「べき論」などを振りかざして、自分は責任を取らない形で要望を通そうとする

- 相手との感情的な対立を恐れて、自分の本心を隠し、後になって言動の不一致を起こす

- 自己防衛的な態度を取って、話題となっている問題の本質に目を向けない

という幼稚で不快なものだったと思う。

こういうタイプのコミュニケーションの実例が、本の中でもたくさん紹介されていて、自分自身を見ているようで本当に恥ずかしくなったよ。

こんな態度を取り続けられたら、XXXが「ないがしろにされている」「馬鹿にされている」と思うのも無理はないと思う。

本の中にも「こういうコミュニケーションは対立的な関係性を誘発して、相手の攻撃性を高める」と書いてあって、まさに今の二人の関係そのものだなと思ったよ。

XXXは怒りたくて怒っているわけじゃない。不快な気持ちにさせ続けてごめん。

このコミュニケーションスタイルから抜け出すため方法は、「以下の問いに自分の中で具体的な答えを用意した上で会話を始める」ことなんだって。

1. 何が起こっているのか?

   話題に挙げたい具体的な事実。自分が相手に対して持っているイメージ(レッテル)とは切り離して考える

2. それについて自分はどう感じているのか?

   「相手は~~すべきだ」のような思考ではなく、あくまで自分がどのように感じているかを把握し、率直に表現する

3. どのような具体的変化を望むか?

   相手への不平不満ではなく、建設的な意見や要望を準備する。相手一人に変化を求めるのではなく、相手と二人で物事をより良くしていくという姿勢で

この方法は、たぶん基本的には相手に対して何か主張する時の物だと思うけど、

- べき論に流されずに、自分の感情を率直に把握して伝える

- 相手の言動を一方的に解釈するような態度(レッテル貼り)はやめて、事実とそれを受けての自分の感情だけに焦点を当てる

- 二人の間の関係性は二人ともが責任を持っているもので、「どちらかのせい」と考えるのをやめる

というような考え方は、普段の会話の中でも使っていこうと思っています。

これまで、XXXは一貫して「対等な関係の中で家庭生活をより良くしていきたい」と伝えて続けてくれていたよね。

今、改めてそのありがたさが身に染みています。でも俺が一方的にその責任から逃げ続けて、XXXに苦しい思いをさせ続けていた。本当に申し訳ない。

互いに前を向いて進んでいけるような関係になるために、これまでの加害に対する責任を果たすために、

これから自分のコミュニケーション/態度を変える努力をし続けていきます。

○○○より

終わりに

G.A.D.H.A(Gathering Against Doing Harm Again:ガドハ)は、大切にしたいはずのパートナーや仲間を傷つけたり、苦しめたりしてしまう「悪意のない加害者」が、人との関わりを学習するためのコミュニティサービスです。

当事者コミュニティの運営加害者変容理論の発信トレーニングなどを行い、大切な人のために変わりたいと願う「悪意のない加害者」に変容のきっかけを提供し、ケアのある社会の実現を目的としています。

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